KoTomの徒然

普段考えていることを中心に、自由気ままに書いています。

記憶という監獄(「私はガス室で「特殊任務」をしていた」シュロモ・ヴェネツィア)

みなさんはやたら記憶に残っている本はないだろうか。 今回紹介する本は5年ほど前に読んだもので、何度も読み返したわけではないのだが、特段記憶に残っている。 この本は第二次世界大戦中のユダヤ人生存者の話だ。このくだりだけでホロコーストの話かと察し…

差別との向き合い方(「昨日星を探した言い訳」河野裕)

今回は、先日所属サークルの方で読書会を行った、河野裕さんの「昨日星を探した言い訳」について扱いたいと思います。この作品を扱うのは2度目ですね。 kotom0919.hatenablog.com 昨日星を探した言い訳 作者:河野 裕 KADOKAWA Amazon 今回の読書会のテーマは…

演技力の弊害(「正体」染井為人)

最近、友達に誘われて映画を見に行った。映画好きの友達で、小説も好きだ。今回は染井為人さんの「正体」を読んで、映画を見たくなったからと誘われた。僕は読んだことがなかったのだが、あらすじから面白そうだなと思って、誘いに乗った。 個人的に映画は複…

歴史の正しさと意味とは(「A」中村文則)

こんにちは。今回のブログは中村文則さんの短編小説、「A」からの問いです。 この小説は以下の本に収録されています。 A (河出文庫 な 29-4) 作者:中村 文則 河出書房新社 Amazon 話の主人公は戦争中の日本軍。舞台は占領中の中国。上官の枠が空いて兵をまと…

思想のアウトプット

自分を見つめ直すためにはどうしたらいいのでしょうか? 芯のある人間になるためにはどうすればいいのでしょうか? 大学生活のカウントダウンも着々と進み、自分とは何者なのかについて省みて見る機会も増えました。自分がどう感じているのか、自分がどう思…

雨男、雨女は本当にいるのか?

こんにちは。季節は移り変わりすっかり秋になりましたね。気候も天気も秋らしく、秋雨も多いです。そんな中、ある人と会話をしていて、こんな話になりました。 「自分たちが会う日ってたいてい天気がグズついていない?」 確かにその相手と会う時は毎回のよ…

ついつい長居してしまう本屋にするには

昨今の「本離れ」で本屋の経営はどこも難しいものになっていると思います。 そんな中で、こんな本屋は長居してしまうな、こんな本屋だったら積読になると分かっていても余分に買ってしまうなって思う本屋について考えて行こうと思います。 僕の提案する本屋…

良い飲食店の条件とは何か

こんにちは。今回は週7日外食をしている、自炊しない人間がお届けします。一応プライドのために言っておくと、バイトでキッチンに入っているので料理自体はできます。(というよりバイトのせいで料理に嫌気がさしてしまい休憩中です)。 チェーン店から個人…

神保町の古本屋はなぜ日曜休みが多いのだろうか

こんにちは。以前神保町に行ってきて、記事を書いたのですが、そこでいただいた質問、「なぜ神保町の古本屋は日曜休みが多いのか」について、勝手に考えていきたいと思います。真実と違ったらすみません。 kotom0919.hatenablog.com 仮説1:観光向けではなく…

神保町を歩いてみた

こんにちは。先日東京に行き用事があってそのついでに神保町によってきました。神保町といえば古本の街。ということで古本屋巡りをしてきました。 突然ですが、僕から一つ神保町に関する忠告を。日曜日は閉まっている店が多いです。僕が行ったのもちょうど日…

我と流行について(断食芸人)

世の中には流行があります。それに対して個人、我があります。このバランスは非常に難しいものかと思います。今回はその点にクローズアップしていきたいと思います。 田舎医者/断食芸人/流刑地で (光文社古典新訳文庫) 作者:カフカ 光文社 Amazon この問題…

これからアルバイトを始めるきみへ

今回の記事は自分の学生生活を踏まえて、アルバイトで感じてきたことについてまとめていこうと思います。 まず、僕のアルバイトの経歴なのですが、塾講師を2年、大学の学生支援本部でのイベントスタッフを1年弱、ブックカフェ店員を半年、飲食店のキッチン(…

味覚がなくなるってどんな感覚?

こんにちは。前回のブログでコロナになったことをお伝えしたのですが、熱も下がり咳も落ち着き、療養期間も終わり外出できるようになりました。 コロナといえば後遺症が残る方もそれなりにいると聞きます。かく言う僕も、前回のコロナでは息苦しさと疲れやす…

2度目のコロナに罹った話

こんにちは。タイトルの通りなのですが2度目のコロナにかかりました。なんだか最近はやっているみたいですね。前回ほどは症状もひどくなく、せきはまだ出ますが、熱は下がり、快方へと向かっています。 そこで今日は前回と同じところや違うところをゆるーく…

幸せとは

以前「幸福な王子」で読書会を行い、一部を記事にもしたのですがさらに深く幸せについて考えていきたいと思います。記事が気になる方はこちらへ↓ kotom0919.hatenablog.com 幸せとはなんなのでしょうか。まずは色々なところから引用してみましょうか。 最初…

権力の比喩としての椅子

今回の記事を書くきっかけとして2つのことがありました。 ひとつ目はヨルシカさんの楽曲に度々登場する「ソファー」の解釈。このソファーは「強盗と花束」や「チノカテ」といった楽曲で登場します。「強盗と花束」の方は以下の記事でも触れているのでこちら…

「幸福な王子」は幸せだったのか

こんにちは。今回はオスカー・ワイルドの幸福な王子をピックアップして考察していきます。 物語の概要としては、街に建てられた荘厳に装飾をされた幸福な王子の像が、羽を休めていたツバメに頼んで自分につけられた宝石や金のメッキを貧しい人たちに配るとい…

本山の隠れ家的カフェ

僕は今、愛知県名古屋市の名古屋大学付近に下宿しているのですが、本山駅付近の喫茶店でおしゃれで落ち着きがあって読書に最適なカフェを紹介していこうともいます。どの店舗も席数はそこまで多くなく、気軽さはあまりないのでそこはご承知を。 Patisseries …

神様は作品なのか(レプリカント)

今回はヨルシカの楽曲、レプリカントの歌詞より「神様なんて作品なんだから♪」というフレーズを取り上げました。この楽曲はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のオマージュであり、その部分はこちらの記事で取り上げています。 …

不条理文学はなぜ必要なのか

みなさん、不条理文学を読んだことはありますでしょうか。カミュやカフカなどが大家として知られています。 たとえばなのですが、この中からカフカの「変身」を例に挙げてみます。 読まれたことのある方はわかると思うのですが、読んだ感想として、「なんて…

ヨルシカと文学

みなさんヨルシカという音楽アーティストをご存じでしょうか。 有名曲に「ただ君に晴れ」や「晴る」があります。コンポーザーのn-bunaさんの文学、芸術をモチーフとした感性豊かで奥行きのある楽曲をヴォーカルのsuisさんが多彩で感情表現の豊かな歌声が聴き…

その仕事は誰が負うのか(何もかも憂鬱な夜に)

今回は中村文則さんの「何もかも憂鬱な夜に」からのお題です。 この小説は死刑囚と刑務官を中心に進みます。 詳しいあらすじはリンクをご覧ください。(僕が持ってる本と表紙が違います!) 何もかも憂鬱な夜に 作者:中村 文則 集英社 Amazon 刑務官とは囚人…

”物語を書く”とはどんな行為なのか

There are three rules for writing a novel. Unfortunately, no one knows what they are. Somerset Maugham (1874~1965) (物語を書くためのルールが3つある。 残念なことに誰もそれが何だかを知らない。) この記事は「”物語を読む”とはどんな行為なのか…

”物語を読む”とはどのような行為なのか(後編)

I am a part of everything that I have read. Theodore Roosevelt (1858~1919) (私は私が今までに読んできたものの一部である。) ここからは”物語を読む”という行為について前編とは別の視点で考えていきたいと思う。後編だけでも簡潔はしているが、ぜひ…

”物語を読む”とはどんな行為なのか(前編)

Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot. Charles Chaplin(1889~1977) (人生は近くで見れば悲劇であるが、遠くから見れば喜劇である。) こんにちは。物語を読む、俗に読書という行為がある。おそらくほぼ全ての方に経験が…

台風の迫る動物園に行ってみた

皆さんこんにちは。台風10号がノロノロと近づいてきていますね。今日はそんな天気の中、愛知県名古屋市にある東山動植物園にお邪魔してきました。 台風が近づいてきているとはいえ、まだまだ遠く、暴風雨という感じではなかったです。普通の雨の日でしたね。…

物語はどこまでフィクションなのか

僕は小説を読むことが好きなのですが、その中の割合を考えてみるとフィクションのが多いことに気づきました。そもそもなのですが、世の中の小説にはフィクションのが多い気がします。今回はそんなフィクションについて取り上げていきたいと思います。 冒頭の…

まだ見ぬ文学を見つける旅

世の中にはさまざまな文学作品が溢れています。それらは傾向が違ったり内容が違ったり、実にさまざまな様式を呈しています。 小説家の工夫もさまざまで、2冊でパラレルワールドになっていて相互補完どちらから読んでも良かったり、実際に割り振られた章番号…

読書と空間

皆さんはどこで本を読むことが多いですか? 今回はどんな条件がそろえば本が読めるのか、はたまた、どんな場所で本を読みたいのかについて主観を大いに交えながら考えていこうと思います。 まず、自分の周りなのですが、結構、通学とかの空き時間で読んでい…

普通とは誰にとっての普通なのか(コンビニ人間)

今回は村田沙耶香さんの小説、「コンビニ人間」から問題をピックアップしていきたいと思います。話については読まれるのが一番は早いというのと、あらすじを読んでもらった方がきれいにまとまっていると思うのでそっちにお任せします。 コンビニ人間 (文春文…